少子高齢化が進む中、社会保障の考え方が変わってきています。
今まで社会保障といえば、医療、介護、年金の分野の保障でした。しかし利用する世代が高齢者に偏るため、子ども・子育てにも焦点を当てた「全世代型の社会保障制度」へと考え方が変わってきました。
そもそも日本の社会保障費は急速に進む少子高齢化で大きな課題を抱えています。厚生労働省の「人口動態統計」によると、高齢化率(65歳以上の人口割合)は2015年の26.6%から2060年には39.9%になり、10人に4人は高齢者になります。一方、出生数を見ると2015年は101万人でしたが2060年には48万人と減り、赤ちゃんの数は今の半分になってしまいます。このままの高齢化によって急増する社会保障費を現役世代が支えていくには限界があります。
2016年度の社会保障給付費は118.3兆円(年金56.7兆円、医療37.9兆円、介護・福祉その他23.7兆円)でした。1990年は47.4兆円でしたから急速に増えてきているのが分かります。財源はというと、働き世代からの社会保険料が66.3兆円で、足りない分の52兆円は税金で賄っています。社会保険料の徴収は年々多くなっていますがそれでも財源としては微増で、増える社会保障給付のほとんどを税金で賄っている状況です。
しかし、日本の借金である債務残高は約1,100兆円にもなり、これも1990年の約280兆円から急速に積み上がってきています。国際的にも最悪の水準にあり、債務残高の国際比較(対GDP比)で日本は250%と他の先進国の100%以下(イタリアを除いて)から比べると、いかに多額の借金を抱えているかがわかります。借金は将来世代への負担の先送りです。このままでは、将来、社会保障制度を安定的に機能させることができなくなる恐れがあります。子ども、孫、ひ孫たち、将来世代へ、これ以上の負担を先送りすることはできません。
そこで最近よく耳にするのが「社会保障と税の一体改革」です。社会保障と税の一体改革においては、2019年4月に実施の消費税率の引上げによる増収分を、すべて社会保障の財源に充てることになっています。
このようにして安定財源を確保することで、社会保障の充実・安定化と、将来世代への負担の先送りの軽減を同時に実現しようとしています。
そして今回は全世代を対象にする社会保障にしようと、高齢者3経費(医療、介護、年金)から社会保障4経費(子ども・子育て、医療、介護、年金)となるよう少子化にも視点を当てた割り当てになっています。しかし、他の経費から比べると子ども・子育ての部分はまだ少額です。そこで最近では教育無償化や待機児童解消などを賄う新たな財源として、年金などの保険料に上乗せして徴収する『こども保険』制度の検討が始まりました。少子高齢化が急速に進む中、子育てや教育にかかる負担を社会全体でどう分かち合うか、国民的な議論を呼ぶことになりそうです。
※財務省のHPでも社会保障がよくわかるインフォグラフィックス動画を公開しています。