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健康データがこれからの保険料を変える 〜治療から予防へ関心が拡大〜

ある生命保険が昨年末に「健康年齢」に応じて保険料が変わる保険商品を発売しました。Web上でBMIや血圧、血液検査の項目などの健康診断の結果を入力すると、『あなたの「健康年齢」は〇〇歳です「実年齢 ± ○」』と出てきます。

これまでの保険商品は、実年齢と性別でほぼ自動的に保険料が決まるのが常識でした。しかし初めて商品化されたこの商品は、健康状態に応じて保険料を割り引いたり割り増ししたりする保険です。そして加入後も3年ごとにその時の健康年齢に応じて保険料が変動するのも特徴です。

実年齢48歳の男性が健康年齢43歳と判定されると毎月の保険料は1819円。逆に同53歳の判定なら2915円。月額1000円以上の差がつきます。健康かどうかが経済的負担の大小に直結するため生活習慣を改善する誘因が高まります。長い目でみて病気にかかるリスクも減り、保険会社にとっての支払い負担も減るというわけです。

どのように健康年齢を割り出しているのでしょうか。入力するのはBMI(体格指数)や血圧、尿たんぱく、血中脂質、肝機能、血糖値など健診結果に記載されている8~9項目の数値です。提携している日本医療データセンター(東京・港)が持つ匿名化された約160万人分の健診結果や診療報酬明細書などのビッグデータを活用しています。そこから各項目の数値の大小と、がんや糖尿病など七大生活習慣病の発症との相関関係を分析することで、将来の疾病の発生率等を算出します。ただ、単に他社のビッグデータを借用しているだけではなく、血圧や血中脂肪などの数値を単独でみるのか等、どの項目に比重をおいてみるのか、性別によっても入力する項目が変わります。

さらに、銀行が融資先の貸し倒れリスクを評価する手法をも応用しています。銀行は自己資本比率や流動資産比率、キャッシュフローなどの財務データを組み合わせて企業の信用リスクを評価します。倒産確率を計算して金利設定などに反映します。

この保険も同じように、複数の項目がそれぞれどれくらいの割合で病気の発症に影響しているかを分析。どの程度の比重をかけて各項目の数値を評価すれば最も説得力のある相関関係にたどり着けるか、効率的に割り出すための数式を開発し特許を取得しています。 一見、病気との因果関係が強そうな項目がそれほど重要でなかったりする場合もあるようです。実際、入力項目に「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールは入っていません。

サイトで健康年齢を確認した利用者の半分程度は、実年齢より健康年齢が高く出ているそうです。いざという時の保険の役割から、普段の生活の健康への関心へと役割が広がってきています。今後はウェアラブルのような健康管理ツールも広まり、健康関心度はより高くなることが予想されます。

地域医療についてもこれからは治療だけではなく、健康でいるための予防に関する情報発信の役割が、一層高まってくるのではないでしょうか。


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