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医師の半数は「持続不能」と回答 〜国民皆保険による医療の限界〜

この時期、財務省と厚生労働省は2018年度予算編成に反映する社会保障費改革を巡る調整に入っています。診療報酬改定では、薬剤師の調整行為に支払う調剤報酬の大幅引き上げや、入院への診療報酬を厳しく算定する仕組みに改めることが柱になっています。財務省は診療報酬の2%台半ば以上のマイナス改定を目指していて、6年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定に合わせて、制度改革を促し社会保障の持続性を高めて行く方向です。 その社会保障制度の国民皆保険についてですが、日本経済新聞などが実施したアンケート調査では、医師の半数が「持続できない」と考えていることがわかりました。高齢化や医療技術の進歩で治療費が高額になっていることに、医療現場で働く医師の多くが強い危機感を抱えているようです。医療の効率化を挙げる医師も目立ちました。

国民医療費は1990年度に20兆円を超え、2015年度は概算で41.5兆円。政府の推計では25年度には54兆円に達する見込みです。こうした状況について全国1030人の医師(勤務医・開業医)への質問で、「現状の皆保険制度に基づく医療は今後も持続可能と思うか?」との質問に、「そう思わない」との回答が52%と半数を超えました。理由に挙げられたのは、「高齢者の医療が増大しすぎている」「医療が高度化して薬剤が高額になっている」などのコメントが目立ちました。

持続可能と応えた医師は25%いましたが、「患者負担の増加が必要」「消費増税があれば」など持続するための条件をつけていて、現状のままでは維持が難しいとの認識が大半を占めていました。

年代別では、30代が58%と6割近くが「持続不能」と答え、40代も54%と若い世代ほど危機感が強い傾向がありました。

日本医師会でも「皆保険制度を維持するためには、国は増える医療費に対応できる財源を確保すべきだ」と提言しています。回答した医師の中には、「支払い能力のある人にもっと払ってもらわないと維持できない」や、「過剰診療も大きな問題」と医療界の対応を促す声もありました。

海外では大病院の受診はかかりつけ医の紹介状が不可欠など受診制限がありますが、日本では患者は自由に医療機関を受診できるフリーアクセスが認められています。日本の通院回数は海外の1.5倍〜3倍程度と多く医療費増加の一因になっています。

フリーアクセスの見直しや高齢者負担の増加については今までも議論があり日医などが反対し進んでいませんでしたが、負担増や増税がなければ薬価だけではなく医師の診療費も削減対象になり、今回の改定の議論は注目が高まっています。少子高齢化が進む中、テクノロジーの進化と合わせて、社会保障の考えは大きく変わることになると予想されます。