様々な環境変化が押し寄せる今、保険業界は大きな転換期を迎えています。少子化・高齢化や長引く低金利により新たな商品提供を求められていること、一昨年に保険業法の改正があり保険業界に対する規制の変化と募集に対する流通が大きく変わったこと、そして保険とテクノロジーの融合により未来型商品・サービスに向けた開発が始まったことなどが挙げられます。これらのことが一気に推し迫っており、保険会社および保険募集人にとって従来的な管理・販売手法は陳腐化し、新たな環境変化への挑戦が求められています。
保険業界を取り巻く環境変化で、少子化・高齢化への対応、長期金利の低迷は深刻な問題です。2016年2月の日本銀行のマイナス金利政策の導入以降、超低金利が恒常化し、保険販売、資産運用面で大きな影響が出ました。運用面では日本国債中心の運用から外国債券や社債へのシフトなど新たな投資先の開拓が求められています。また収益確保に向けた海外投資(海外保険会社のM&A、海外への進出など)も活発です。販売においても手数料の引き下げにより、販売代理店の収益確保が難しくなってきています。
商品面では、2016年に銀行窓販を中心に貯蓄性商品の販売を中止、また今年の4月からは生命保険の保険料の基礎となる標準利率の引き下げがあり、各社で商品の見直しが行われました。最近では、主要生保は外貨建て保険商品の販売を開始するなど対応を図っています。なお、来年2018年4月からは保険料を算定する標準生命表の改定が予定されています。現在の寿命を反映し、死亡率が引き下げられることになります。そのことにより死亡保険の保険料は引き下げられ、医療保険やガン保険などの商品は保険料が引き上げられることになります。
少子化・高齢化対応では、各年齢層のニーズに対応した形で、より保障を細分化した商品が登場しています。介護や認知症、就労不能、特定疾病や不妊治療など生きている間の保障が充実し始め、三大疾病保障の支払い範囲の拡大やガン保険も現在の治療に応じた給付など商品の内容も変わってきました。
保険とテクノロジー技術を融合させた「インシュアテック」も動き始めました。健康診断など医療ビッグデータの収集・解析や契約者の健康増進への取り組みなどから、健康リスクを細分化し保険料に反映させるものです。契約者個々のリスクに踏み込むという発想は、従来の生命保険に対する考え方や商品のあり方を転換させるという意味で、商品・サービス革命が起こりつつあると言えます。
健康増進に関する保険料の引き下げや給付金の支払い(キャッシュバック)は各社力を入れ始め、AI(人工知能)の活用やアプリの開発で付帯サービスにも変化を起こしつつあります。今後の生命保険会社は、万が一の保障を提供する会社から、健康増進を提供する会社へと業態変換を迫られていくことになりそうです。