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2030年の医療のあり方は? 〜オンライン診療は健全に普及するか〜

パソコンやスマートフォン、タブレット端末のオンラインチャット(テレビ電話)を使い、薬の飲み方を薬剤師に教えてもらう「遠隔服薬指導」が2018年度中に始まります。国家戦略特区の規制緩和により、ここ愛知県と福岡市、兵庫県養父市の一部での実施が5月末に決まりました。患者は医師による診察から薬の受け取りまでがすべて自宅ですむことになり、オンライン診療の普及を後押しすることになりそうです。

オンライン診療については、今年度の診療報酬改定でオンライン診療科が新設され、オンライン診療報酬が算定できるようになりました。またオンライン診療ガイドラインが初めて整備され、政府としても成長戦略の一環として普及をさせたい一方、健全に広めていきたいというメッセージが伺えます。

今回の遠隔服薬指導は、政府が開いた国家戦略特区の区域会議で決められました。服薬指導では、薬剤師が患者に薬を飲む回数や量などの基本的な情報を伝えます。保管方法や、副作用が出ていないかどうか、他の薬との飲み合わせなども確認します。法律上は対面での指導が義務付けられていますが、特区ではオンラインでのやり取りが認められることになります。

患者は病気やケガをしたら、まずは医療機関で医師に診察をしてもらいます。初診は対面が義務で、オンラインは利用できません。再診からはオンラインでの診療と服薬指導が受けられます。医師の処方箋が薬局に送られ、薬剤師からネットで薬の飲み方を教えてもらえば、薬が自宅に配送されます。

厚生労働省はオンラインでの服薬指導で薬局に行く手間を省ければ、適切な治療が続く効果を期待しています。生活習慣病などの慢性疾患は通院負担や自覚症状が乏しいことなどを理由に、2割程度の患者が途中で治療をやめるとした調査もあります。症状が悪くなれば高額な治療が必要になり、医療費がかさむことになりかねません。

医療機関や薬局が遠い過疎地に住む人への配慮もあります。実施が決まった兵庫県養父市は山間部が多く、通院に片道1時間ほどかかる患者もいるそうです。患者が使っているタブレット端末などに、市が用意するアプリケーションをダウンロードすればオンライン指導を受けられるようにします。

遠隔服薬指導には一定の要件が設けられています。初診の時は、薬剤師から対面で薬の飲み方を聞かなければなりません。特区で認められた愛知県でも利用できるのは一部の地域で、交通が不便で薬局が近くにない患者に対象は限られます。

一方で都市部での適用を求める動きもあります。薬局に行く時間がとれないビジネスパーソンや子育て世代の需要に対応する狙いで、オンライン診療を利用した患者に限って住む場所にかかわらず遠隔服薬指導を認める規制緩和を区域会議では提案されています。

診療、服薬指導などは、対面でおこなうことが大前提だっただけに、現場では懐疑的な意見がまだ多いのが現状です。しかし、これからの日本の課題である高齢化や過疎化による在宅医療や地域格差への解決策の一つとして、オンライン診療を育てていく必要性は皆感じています。今後は事例を積み上げて検証、改善をしていくプロセスになってきたのではないでしょうか。


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