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がんでもやめない、やめさせない。 〜がん対策に積極的な企業の取り組み〜

がんに対する積極的な企業の取り組みが増えてきています。ご存知の通り日本ではがん患者が増え続けており、国立がん研究センターの推定では、新たにがんと診断された人は17年に101万4000人と過去最高を更新しています。このうち約3割が就労世代に当たります。ただ、抗がん剤や医療機器の進歩によって、がん治療は長時間の休暇が必要な手術や入院から、短期入院・通院が中心になっています。診断から5年後の生存率も上昇が続き、働きながら治療ができる病気になりつつあります。

がんにかかった人が働き続けられるよう事業主に配慮を求める改正がん対策基本法が16年12月に成立。がん検診を受けやすくするといった予防策だけではなく、治療と仕事の両立支援策を独自に儲ける企業の動きは広がり始めています。

伊藤忠商事はがん治療を社員個人の業績評価として認める仕組みを導入しました。治療計画を目標の一つとして設定し、進捗すれば賞与に反映します。その他、40歳以上のがん検診を義務化し、保険適用外の高度先進医療費は会社が全額負担する制度を設けました。働き盛りの中堅幹部などが治療を理由に退社することは企業の成長にもマイナスになりかねません。人手不足が深刻化するなか、治療を受けながら働き続けられる環境づくりを整備しています。

テルモは17年1月にがん治療との両立支援制度を設けました。失効した有給休暇を貯めておき、闘病中に1日単位で利用できるようにしたり、欠勤扱いにならず翌年の有給日数に影響しない「無休休暇」を付与したりします。この他、通院などのために短時間勤務や時差出勤も認めます。現在は看護や育児むけに認めている在宅勤務制度をがん治療にも適用することなども検討しています。

化学品などを扱う三谷産業も7月から、がんなどの治療のために短時間勤務や時差出勤などを認める制度を始めました。失効した有給休暇を最大40日まで積み立て、入院などに充てられるようにもしました。

治療にかかる費用を補助する動きもあります。伊藤忠以外にもサントリーは高度先進医療費を1人500万円を上限に補助をするほか、ライフネット生命保険は治療に伴う休職から復帰し、6ヶ月間は通院時のタクシー利用などに使える手当を毎月5万円支給する制度を昨秋に導入しました。

東京都が14年に発表したがん患者の就労に関する実態調査によると、がんに罹患後に退職した人が21.3%に上がりました。理由としては複数回答で「治療・療養に専念するため」53.1%と最も多く、体力面で仕事を続ける困難さや周囲に迷惑をかけたくないという声も目立ちました。一方、企業側は仕事と治療を両立できる職場づくりの課題で、「代替要員の確保」52.3%、「休業中の賃金支給などの金銭的な補償」38.4%などを挙げました。

人手不足の中、優秀な人材を失うのは大きな損失になります。「働きやすい会社」という企業イメージも高まることから、独自の支援策を設ける企業の動きは今後も増えそうです。


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