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がんの生存率は3年、5年と上昇 〜早期発見の技術開発でさらに改善へ~

先日、国立がん研究センターからがんの生存率が発表されました。それによると2012年にがんと診断された患者の3年後の生存率が72.1%と昨年の結果より0.8ポイント改善しました。09~10年に診断を受けた人の5年生存率も66.1%と0.3ポイント上昇しており、新しい抗がん剤の開発などが奏功している可能性があります。

国立がん研究センターは昨年、最新の治療の効果をいち早く検証するために3年生存率の公表を始めました。診断から3年間生存している人の割合を、がん以外の影響を除外して計算しています。

今回の集計には、2014年に発売された新薬「オプジーボ」をはじめとする「免疫チェックポイント阻害剤」による治療を受けた患者も含まれているとみられています。国立がん研究センターの東尚弘・がん登録センター長は「昨年の結果からの変動幅は小さく、詳しい効果を検証するにはさらに数年間の調査が必要だ」としています。

3年生存率を種類別で見ると、前立腺がんの99.2%が最も高く、女性の乳がんの95.2%、子宮内膜がんの85.9%が続きました。逆に最も低かったのは膵臓(すいぞう)がんの16.9%でした。

今回の調査では、要望の多かった腎がん(85.6%)、喉頭がん(84.4%)、腎盂(じんう)尿管がん(55.6%)、胆のうがん(33.4%)の生存率を新たに公表しています。09~10年に診断された患者の5年生存率でも、傾向は変わりませんでした。

がんの生存率が伸びている要因に、検診による早期発見があげられています。日本のがん検診受診率はOECD加盟国30カ国の中で最低レベルで30〜50%程度と低い状態ですが、少しずつ年々増えてきています。また、がんの早期発見技術も向上しています。

早ければ2020年に一部の人間ドックや健康診断で受けられるようになりそうなのが「マイクロRNA(リボ核酸)」調べる血液検査です。血液中のマイクロRNAは遺伝子の働きに関わる物質で、体内に約2600種類存在します。がんは早期から特定のマイクロRNAを分泌することで増殖したり移転したりしています。血液中にどのマイクロRNAが増えているかを調べれば、がんの有無やがんができた臓器を早い段階から予測ができます。必要な血液量は50マイクロリットル程度と1滴分ですので、簡単に調べることができます。

国立がん研究センターでは、遺伝子解析チップでマイクロRNAの血液中の量を測ることで、多くのがんをステージにかかわらず95%以上の感度で検出できたとしています。ステージゼロと呼ばれる、粘膜内にとどまり内視鏡で切除できる早期がんも見逃しませんでした。便潜血検査でも見つかりにくい場所にできる大腸がんも、精度良く検出できたそうです。

検査キットの製造販売承認を年内にも厚生労働省に申請される予定ですので、承認されれば、20年にも一般の人の検査に使えるようになるかもしれません。当面は数万円の費用がかかりそうですが、将来は公的保険が適用されて安くなる可能性があります。

血液の他、尿からがんを発見する技術や、線虫を使って発見するアイデアも開発が進んでいます。がんは早期発見がますます進み、がんの生存率は今後さらに伸びていくことが期待されています。