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法人加入の生命保険税制の行方 〜各生保「節税」はうたわず〜

今年の2月に国税庁が法人の加入する生命保険課税について見直し方針を発表してから約半年、各保険会社は新しい課税ルールに沿った商品の販売を再開し始めました。

法人保険をめぐっては、返戻金を過度に膨らませた「節税保険」の販売が過熱し、国税庁や金融庁が見直しを迫っていました。今年2月の見直し方針を発表して以降ヒアリングを重ね、6月28日付で「法人税基本通達等の一部改正について」の法令解釈通達が発遣されました。

国税庁の新ルールでは、返戻率が50%以下の場合は従来通り保険料の全額を損金に算入できますが、50%超では返戻率が高いほど損金算入が制限されます。また、法人契約の解約返戻金の無いがん保険や医療保険についても、全額損金算入できる保険料の範囲を1契約あたり年間30万円までに制限することになりました。

もう少し詳細を説明すると、法人が契約者で、役員又は使用人を被保険者とする定期保険又は第三分野保険(がん保険や医療保険)で最高解約返戻率が 50% を超えたものに加入した場合には、その保険料を3パターンに分けて損金割合を定めています。

最高解約返戻率が50%超〜70%以下の商品については、保険期間の最初の4割相当の期間について、保険料の6割を損金算入ができます。最高解約返戻率が70%超〜85%以下の商品については、保険料の損金算入割合は4割になります。                                                   最高解約返戻率が85%超の商品については、保険期間の最初の10年は1割の損金算入になります(10年以降は3割)。これらの取り扱いは、令和元年78日以後の契約に適用されて、それ以前に加入している保険については従来通りの課税となります。

一方、がん保険や医療保険で解約返戻金相当額がない終身保障期間の契約について、今までは保険料を支払う期間を2年や5年などに短く設定することで年間の支払う保険料を圧縮し、節税効果を高めていました。これらの保険についても全額損金算入ができるのは1契約あたり年間保険料が30万円までとし、それ以外は保険期間を116歳までとみなし、加入時の年齢からの期間を按分して経過に応じて損金算入をすることになりました。

これらの取り扱いは、令和元年108日以後の契約に適用されて、それ以前に加入している保険については従来通りの課税となります。

国税の税制見直しのため、生命保険各社は法人保険商品の販売を一時停止していましたが、変更の内容が固まってきたため各社法人向け商品の見直しをし、販売を再開し始めました。その特徴は従来の保障に改めて重点を置き節税をうたわなくなったこと。各社販売時に「保険料を損金算入しても課税のタイミングが変わる繰り延べにすぎず、原則、節税効果はない」といった注意事項を記載したチラシを配り説明を義務づけています。

生命保険会社を取り巻く環境は、世界的な低金利や人口の減少など決して良いものではありません。従来通りの商品の発想を超えた介護や認知症、健康増進、テクノロジーを活用したインシュアテックなど、新たな領域を模索する必要に迫られています。


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