親が住んでいた家を相続したものの、今後も住むつもりはなく空き家のまま、といった人が増えています。総務省の調査では、2018年10月時点の空き家は849万戸と総住宅に占める空き家の割合は13.6%と過去最高になりました。
空き家のまま放置すると固定資産税など維持コストがかかり続けますが、さらに管理状態が悪く自治体から危険と指定された「特定空き家」になると、固定資産税の優遇がなくなり税負担が増えることになります。相続した家に住むつもりがなければ、基本的には「売る」か「貸す」ことになります。売却か賃貸かを考える際は、税制についても考慮する必要があります。
16年4月、一定の条件を満たす空き家を売却すると、譲渡所得から最高3000万円を特別控除できる特例が導入されました。現時点では23年12月末までに売却すれば特例が適用されます。
対象となる家屋は、親が亡くなる直前まで住んでいた家であること、もしくは住んでいたが直近は老人ホームに入居するなどして住んでいなかった場合も含まれます。
その他、1981年5月31日以前に建った家で、マンションなど区分所有物件ではないこと、相続発生から3年後の年末までに解体するか耐震リフォームをして売却すること、譲渡価格が1億円以下であること、などの用件があります。
売却にはもう一つ「取得費加算特例」といわれる取得費に相続税額を上乗せできる特例があります。相続した家を、相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却すると、相続税額の一部を取得費に加えて譲渡所得を減らせることができます。マンションなど区分所有物件も対象になります。ただし、前述の3000万円の特別控除とは併用ができませんのでどちらかを選択することになります。相続税の支払いが無い、もしくは少額の場合は3000万円の特別控除がメリットありますが、相続税額が高額になると取得費加算特例が有利になる可能性もあります。
空き家を手放したくない場合は、賃貸の選択肢が考えられます。賃貸の場合は水回りや給湯器の故障など維持管理に必要な修繕費用や固定資産税などのコスト負担がかかります。それらに見合う賃料が必要になります。相続税の節税メリットを受けるには、相続前に賃貸に出す方法があります。賃貸期間や空室状況により例外はありますが、賃貸に出すことで相続税を計算する基となる土地や建物の評価額を下げることができます。相続税には親と同居していた子らの税負担を軽減する「小規模宅地の特例」があります。しかし、基本的に親と子が同居していないと活用することができません。その場合でも、賃貸にすることで相続税負担を抑えることができる可能性があります。
今後さらに増えていくことが予想される空き家問題。相続した家に住むのか、それとも売却か賃貸か?空き家が戸建てかマンションか、相続税が発生するのかしないのか、などで利用できる税制も変わってきます。生前に事情に合う方法を早めに調べておくと良いと思います。