スマートフォンや電話を使った遠隔健康相談が広がっています。新型コロナウイルスの影響で病院に通うのが難しい人が増えているためです。国の支援事業として期間限定ながら無料で相談できるサービスも始まっています。診察は受けられなくても、心身の健康不安について幅広く専門家の助言を受けることが出来ます。
遠隔医療サービスは主に診療と健康相談に分かれます。診療は相談者の健康状態を判断して薬を処方できます。一方、健康相談は医師以外の看護師らが助言することも可能で、症状によって診療を促すようにアドバイスします。
遠隔健康相談の利点は移動が難しい高齢者や地方や離島在住者でも利用しやすいことです。初めてでも対面の必要がありません。オンライン診療もコロナ禍が収束するまでの特例として四月から対面なしでも可能になりましたが、初診は対面が原則です。
経済産業省は三月に、遠隔健康相談を無料で提供する支援事業を始めました。オンラインで応じるL I N Eヘルスケア、メディプラット、キッズパブリックの3社と、電話相談中心のセーフティネットの計4社に事業を委託し、期間限定で無料相談に応じています。これらのサービスは24時間365日相談ができるものも多く、チャットやビデオ通話などの相談は、対面で話しづらい、と思う人の利用が多いようです。
病院へ出向いて聞くのをためらうような、小さな疑問にも答えてくれます。4月以降、外来を休止する医療機関が増え、患者も感染を恐れて通院を控えることが多くなりました。一方で、コロナによる心身の不安を感じる人は増えています。その結果、遠隔健康相談のニーズは高まっているようです。4月から正式にサービスを始めたL I N Eヘルスケアは需要増に合わせて、相談に応じる医師を2千人以上登録しました。8千万人超が使う対話アプリの基盤を生かし、相談の利用者は急増しています。
一方日本医師会では、このようなデジタル化は特例中の特例で、危機が収まれば通常の診療、つまり対面診療に戻る、と主張している人もいます。ある開業医の先生は、「都市部の医師やデジタルに詳しい若い医師に患者が流れる」との反対が地方に多い、と感じています。
デジタル化は生活の利便性を高める一方で、従来の仕事を変えてしまいます。変えずにとどまってしまうと、今までの仕組みは守られますが、変わりゆく患者のニーズに答えられず、サービス水準も上がっていきません。それは世界水準のサービスから遅れを取ることに繋がります。世界ではアジアを中心にオンライン診療が急速に広がり、国をまたいで医療相談に応じるサービスも登場しています。
今後の医療のあり方は大きく変わっていくかもしれません。日本人には変わりたくないD N Aが刷り込まれています。今回のコロナ禍は今後の日本の新しい生活様式をどのように変えていくのでしょうか。