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富裕層の節税に包囲網 〜生前贈与の節税優遇は22年度まで~

富裕層の節税封じが一段と強化されます。政府与党が昨年末に取りまとめた2021年度税制改正大綱によると、一括贈与の非課税制度の適用要件を厳しくするほか、住宅ローン控除特例で所得要件を新たに設けることになりました。一方、コロナ禍を踏まえて固定資産税や子育て関連などでは家計に配慮した措置が盛り込まれています。
こちらのコラムでは、税制改正が富裕層に与える影響についてまとめてみました。
一括贈与の非課税制度では、子や孫に教育や結婚・子育てなどの資金援助をした場合、贈与税が非課税になります。今回の税制改正では制度の改廃が大きな焦点の一つになりましたが、期限を延長したうえで富裕層の相続税対策や不適切な利用を抑える措置を導入することが決まりました。
教育資金の一括贈与の非課税制度は、13年に開始した制度で、29歳以下の子や孫を対象に1人当たり1500万円までを非課税で贈与できるというものです。こちらは、学校の授業料や学習塾の費用などに充てることが条件となっています。また、結婚・子育て資金は15年にスタートし、20歳以上49歳以下の子や孫の挙式、出産費用などとして1人当たり1000万円まで非課税で贈与できます。
ともに非課税で贈与できる期限が21年3月末までに迫っていましたが、23年3月末まで2年間延長することになりました。これは、若い世代の教育や子育てにかかる負担を軽減することを重視し決定されましたが、政府税制調査会では、「格差につながるので廃止すべきだ」という主張も目立ち、富裕層が使いにくくなる仕組みも導入されました。
例えば、教育資金では祖父母など贈与者が死亡する前の贈与の使い残し分を相続財産に加算します。これは、23歳以上の子や孫、学校などへ通っていない子や孫への贈与が対象になります。現在は、死亡する3年前からの贈与の残額を加算するにとどまるため、今後は財産を減らしにくくなります。
さらに贈与者が死亡したとき、孫への教育資金で使い残しがあれば、孫が相続などで資産を取得したとみなし、孫にかかる相続税が2割加算されます。現在、こうしたケースでは税金を加算しないため、孫を使った財産減らしに一定の抑制がされそうです。結婚・子育て資金でも同じ仕組みを設け、いずれも21年4月より制度を使い始める場合に適用されます。
富裕層を意識した対策は、贈与の他に住宅ローン控除へも盛り込まれました。住宅ローン控除では、ローンで住宅を取得したり、改装したりした場合に年末の借入残高の1%を所得税額から差し引くことができます。しかし今回から所得要件が適用され、40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅の活用は1000万円以下、50平方メートル以上の場合は3000万円以下となり、住宅から投資用に転用する利用などについても抑制を狙っています。
今回は景気対策や富裕層の節税封じなどを優先した結果、年金の「公的年金控除」見直し、退職の「退職所得控除」見直しなど、年金や退職金税制の抜本改正は見送りになりました。これらは22年度以降の改正の焦点になりそうです。アフターコロナでは、多額の財政出動の反動による様々な増税が想定されます。タックスプランニングもこまめに見直しが必要です。


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