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オンライン診療は日本で根付くのか? 〜中国では医師争奪〜

オンライン診療の恒久化が政府で閣議決定されました。オンライン診療は、過去に受診歴がある「かかりつけ医」を原則としていますが、それ以外の場合でも事前の対話や健康診断結果の把握などを条件として初診から利用できるようになります。
厚生労働省によると、4月末時点でインターネットや電話による遠隔診療の登録をしている医療機関は、全体の15.2%と20年の特例開始時からほぼ横ばいです。オンライン診療の浸透が遅れる一因に診療報酬の低さが挙げられています。また、オンライン診療が広がると、地域で患者を集めて安定した経営を目指す従来の医療秩序が壊れるとの見方も根強くあります。このように、患者が競争力のある医療機関に集まる流れが加速する可能性を警戒している側面もあるようです。今後、日本でオンライン診療は普及されるのでしょうか?中国の事情を参考に取り上げてみます。
中国のネット医療市場では、医師の争奪戦が激化しています。ネット通販大手の京東集団(JDドットコム)の傘下企業は2020年の登録医師数を19年の約12倍である約11万人に拡大。アリババ集団系も21年3月期に前の期比4割増である約6万人まで増やすなど、平安グッドドクター、ウィードクターなど4大企業が事業を拡大ししのぎを削っています。新型コロナウイルス禍の影響や、対面ではかかるのが難しい著名医師の診察を受けられるなどの利点もありオンライン診療が急成長しているようです。また、オンライン診療は、蓄積した医療データを活用する動きにもつながっています。
多くは外部の病院に務める医師で、空き時間に兼業の形でオンライン診療をしています。全国で約386万人いる医師(19年末)のうちオンライン診療に参加しているのはまだ1割程度とみられており、今後も登録者は増えそうです。
中国のオンライン診療は政府が15年にネット専用病院の開設を許可したことで本格化。コロナ禍で遠隔診療の便利さが注目され、市場が一気に拡大しました。中国では公立病院の診療料金は10~50元程度です。一方で京東健康の場合、15分で50~1000元程度と、基本的に対面よりも高めになっています。著名で人気の医師は料金をより高額に設定できるため、一部では医師の奪い合いも起きているようです。
米調査会社によると、中国における20年のデジタル関連の医療市場は、19年比の44%増である3140億元(約5.2兆円)でした。オンライン診療の普及などで30年には、20年比の約13倍である4.2兆元になると推計しています。中国の医療支出額は米国に次いで世界2位に達していますが、一段の拡大が期待されています。
アリヘルスや平安健康はすでにアプリのユーザーが3億~5億人規模に広がっています。平安健康は蓄積したビッグデータを人工知能(AI)で分析し、症状に合った医師を紹介するなどのサービスを展開しており、データを活用した健康関連サービスなどの発展期待もあります。
一方で課題もあります。診療ミスをどう防ぐのかといったガイドラインの整備は進んでおらず、今後は安全性や質の向上も必要となります。
日本で普及が進むかどうかはこれらの課題解決が鍵になりそうです。


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