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異例の貯蓄増加 ~お金を使いきれぬ高齢者~

新型コロナウイルス禍で、個人消費が落ち込んだ間に膨らんだ
貯蓄の行方に関心が高まっています。日本では2020 年の貯蓄
が35.8 兆円と前年の5 倍に膨らみました。コロナ禍は、お金の
ウエイトを歪なものにしています。
内閣府の国民経済計算によると、20 年に消費されず貯蓄にまわっ
たお金は、一律10 万円の特別定額給付金の影響もあり、35.8
兆円に達しました。これは、前年(6.9 兆円) の5 倍の水準です。
また、20年の貯蓄率も19 年の2.3% から11.3% に大きく伸びました。
一方、コロナ禍でも美容院やエステ、ネイルサロンなどの売上は
それほど落ちていないといいます。来客数は減っているようです
が、高額の出費をする高齢女性の人たちがそれを埋め合わせて
いるとのことです。
今年3 月から、帝国ホテルが月額36 万円のサービスアパートメ
ントを始めました。ある記事によると、それを知って真っ先に予約
をしたのは、裕福な高齢女性の人たちであったとのことです。こ
のように、国内旅行も海外旅行も行けなくなったため、銀座や六
本木の高級ホテルに泊まって、ミシュランの星付きレストランで食
事をするのが流行っているようです。
しかし、コロナで増えた小金持ちは特別な富豪ではありません。
旅行や会食、パーティーなどでお金を使うことができなくなり、銀
行口座の残高だけが増えている人たちです。お金が貯まって良
いのではないかと思うかもしれませんが、高齢の方々は時間が限
られています。気力や体力がなくなる前に消費活動をしたいとい
う欲求があります。また、近頃は子供にできるだけ多くの資産を
残そうなどと思う人も少なくなっています。そのため、お金を残し
たまま歳を取り、自分では使えないお金が口座に貯まっていくと、
損をした気になるのかもしれません。
ワクチン接種が先行する米国では巣ごもり消費からリアル消費へ
のシフトが進んでいます。現地メディアによると、データ分析会社
のブルームバーグセカンドメジャーは、食品宅配の米インスタカー
トの4 月の売り上げは前年同月比で2 割減少したと伝えました。
宿泊業界でも20 年7 月に43% であったロサンゼルスのホテル稼
働率は21 年4 月に62% に上昇しています。ロサンゼルス観光コ
ンベンション理事会によると、6 月中旬までの数週間でみると週
末のホテル稼働率は70% 以上に達しているといいます。
ゴールドマン・サックス証券が過去の消費回復パターンを分析し
たところ、落ち込んだ消費がV 字回復するだけでなく、一部で
平時の水準を超えて跳ね上がる期待もあるようです。
兎にも角にもワクチン接種率がカギを握っています。米グーグ
ルの人流データをもとに、伊藤忠総研が接種率の高い主要9 カ
国(チリ除く) の5 ~ 6 月の消費活動を分析したところ、接種率
が約1 ポイント上昇するごとに、消費に向かう人出が1% 上昇する
関係がみられたそうです。国民の62% が1 回でも接種すれば、
消費がコロナ前に回復する傾向もあったといいます。
日本で1 日100 万回ペースの接種が進むと仮定した場合、消費
回復の目安となる「接種率62%」達成は10 月上旬との計算にな
ります。ワクチン接種を終えた高齢の夫婦や友人同士はすでに
活動をし始めています。超高齢社会の日本では、残された時間
のうちに、お金を使いきってしまおうという裕福な高齢者たちが、
コロナ後の消費を牽引していくのかもしれません。

 


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