少子化の進行による日本人口の縮小が加速をしています。
今年9月現在、2021 年の出生数は▲3.7% 減の81 万人程度と見
込まれています。一方2021 年の死亡数は、前年比+3.7% 増の
142 万人前後と見込まれています。
人口動態の変化は、マネーの動きにも影響を与えそうです。
先行する日本では個人金融資産1900 兆円のうち6割以上を60
歳以上のシニア層が保有しています。この層が高齢に伴い、い
ずれ資産を株式から預貯金にシフトすれば、株式相場の重荷と
なるシナリオがささやかれています。
また、外国為替相場や金利についても目配りが必要です。外国
為替相場は長期的には国力を反映するといわれています。人口
減少に伴って日本経済が停滞すれば、円の安全通貨としての信
任が失われ、海外勢の資金が流出して円安が進行する恐れもあ
ります。高齢化で家計の貯蓄が取り崩されて経常赤字が定着す
れば、長期金利が上昇するリスクもくすぶります。
高齢化とともに日本の金融市場を衰退させないためには、高齢
者層から若年層へと資産のバトンを引き継いでいくことが大きな課
題です。日本は既に年間142 万人が死亡する多死社会ですが、
死亡者の数だけ発生する相続の市場規模は年間50 兆円にのぼ
るとされ、今後も拡大が見込まれています。しかし、相続を通じ
た世代間の資産移転には難しさがあり、平均寿命が伸びると共に、
相続のタイミングも後ずれすることになります。2020 年における日
本人の平均寿命は過去最高を更新し、女性は87.74 歳、男性
は81.64 歳となっています。親の世代が80 代から90 代まで生きて、
50 代から60 代の子にお金を残す流れになると、老々介護から老々
相続になりかねません。結果として、子育てなどに資金が必要な
現役世代になかなか資産が移転しにくい状況になります。
一方、今のシニア層は健康で消費意欲が闊達なため、高齢
者が消費を支え需要を伸ばすことで、現役世代の給与が押し上
がる期待もあります。加齢とともに財布の紐が固くなるのがこれま
でのパターンでしたが、ここにきて消費に積極的なアクティブシ
ニアも徐々に増えてきました。
相続によらない資産移転の手段には贈与もあります。13 年に始
まった教育資金の一括贈与の非課税制度は、子や孫の教育資
金として1人あたり1500 万円まで非課税での贈与を認めています。
信託協会によると20 年9月時点の契約数は23 万3720 件で、累
計の信託財産は1 兆7060 億円に達しています。当初21 年度ま
でだった制度の期限は2 年間延長されましたが、今後も再延長
されるかは不透明です。
一方、親や祖父母が未成年者に代わって運用できる「ジュニ
アNISA (未成年者少額投資非課税制度)」は利用が伸び悩み、
23 年での廃止が決まりました。20 年12 月末時点の利用口座数
は45 万4614 口座にとどまり、一般のNISA (約1221 万口座)
やつみたてNISA (約302 万口座) と比べ普及が進みませんでし
た。この要因としては、制度の複雑さなどが挙げられます。
人口急減時代のマネーの行く先は今後どのように進むのか。日本
経済にとって大きな難題です。