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診療報酬改定 今年のポイント ~高齢化時代の対応を反映~

4月からの診療報酬改定内容が固まってきました。新たな不妊
治療に公的保険が適用され患者の費用負担は軽くなる見通しで
す。一方で、効率的な受診を促すために、大病院に紹介なく
受診する場合の負担額が引き上げられることになりました。今回
は改定のポイントをまとめてみました。
診療報酬と制度改定の柱の一つが医療提供体制の見直しで
す。大病院と診療所の役割分担を一段と明確にし、無駄を極力
省いた医療を実現しない限り、超高齢化時代は乗り切れないとの
危機感があります。
今回、報酬改定にその取り組みの強化策が盛り込まれました。
現在、紹介状なしで大病院を受診する場合には初診で5000 円
かかり、再診は2500 円の追加負担が必要です。これが2022 年
10 月1 日からは初診で7000 円、再診で3000 円に負担額が引
き上げられます。この背景には、大病院に症状の軽い外来患者
らが集中しないようにする狙いがあります。
現時点では大学病院など高度な医療を提供する「特定機能病
院」と、地域医療の拠点となる「地域医療支援病院」のうち、
200 床以上の計666 病院が追加負担の対象になります。ここに
200 床以上の「紹介受診重点医療機関」という紹介患者への外
来を基本とする病院が加わります。具体的にどの病院が紹介受
診重点医療機関に当てはまるかは、今後地域の議論の中で決ま
ります。「医療の質」が高まるとの考えから、紹介受診重点医療
機関には入院報酬に8000 円を加算する措置も決まりました。
また今回の改訂には、かかりつけ医の報酬見直しも盛り込まれま
した。かかりつけ医の機能を持つ医療機関に対し、初診時に800
円を上乗せする「機能強化加算」がありますが、過去1年間の
往診などの実績が加算の要件に追加されました。患者に対してか
かりつけ医としての対応をしっかりと説明することが求められます。
不妊治療に関しては大きな改定となりました。これまでは公的医
療保険の適用対象外でしたが、4 月からは保険適用となります。
体外受精や顕微授精の場合、治療開始時点での女性の年齢が
43 歳未満を対象とします。1子あたりの保険適用回数は、女性
の年齢が40 歳未満で6回、40 歳以上43 歳未満は3回となります。
法律上で婚姻関係にある男女だけでなく、事実婚でも認められ、
第三者の卵子や精子を使った治療は適用外となります。
治療法としては初期段階の人工授精のほか、より高度な治療とな
る体外受精や顕微授精も含められました。体外受精などをするた
めに精子を採取する男性への治療も適用となります。
厚生労働省によると、女性の不妊治療に対する平均費用は体外
受精で約50 万円です。2021 年11 月以降、1回あたり30 万円
を助成する制度に拡充しましたが、今後は保険適用に伴い持続
的な負担軽減につながります。一方で、医療機関ごとに大きな
差があった1サイクルあたりの治療費も平準化されます。医療機関
によっては医院経営に影響があり、今後の運用が注目されます。
その他、処方箋の繰り返し利用が可能になったり、マイナ保険
証で報酬加算されることにもなりました。時代の変わり目が医療制
度にも色濃く反映された改定となりました。