Blogブログ

暦年贈与は見直し方針 ~23 年度改正で控除縮小も

お子様やお孫様に毎年贈与をしている先生方は多いかと思います。
その暦年贈与の税制が来年度以降で変わる方針です。贈与を
利用した相続税の節税対策抑えるため政府が贈与税を見直す方
針を打ち出し、相続時精算課税の拡充が取り沙汰されています。
シニア世代には、生前に子や孫へ自分の財産を贈る人が多くい
ます。そしてこの際にかかる贈与税には、暦年課税と相続時精
算課税の2つの方式があります。暦年課税は年110 万円の非課
税枠(基礎控除)があり、暦年課税を使って毎年贈与する場合は、
110 万円を超える部分について財産額が多くなるに従って税率が
10%~55%までの税金がかかる累進方式となります。
一方、相続時精算課税は60 歳以上の父母、祖父母から20 歳(今
年の4月から18 歳)以上の子、孫への合計贈与額が非課税枠(特
別控除) の2500 万円以内なら、何回贈与しても贈与税はかかり
ません。2500 万円を超える部分にかかる税率も一律20%で済み
ます。
相続時精算課税のメリットは、親が亡くなる前に子供が必要として
いるタイミングで、比較的多額の資産を贈与税がかからないか、
少ない額で贈与ができるという点です。
また、贈与した財産の使い道が自由なこともメリットです。住宅取
得資金の一括贈与では最大1000 万円、教育資金では子・孫1
人あたり1500 万円の非課税枠がありますが、目的が住宅購入な
どの費用や教育費に限られます。相続時精算課税については用
途が限られていないため、資産が偏在する高齢者層から若い世
代に資産移転を促すことで経済を活性化する効果も期待されてい
ます。
しかし相続時精算課税の利用は低迷しています。大きな理由
は贈与した人が死亡した際の相続税の違いです。相続時精算課
税では贈与財産が全て相続財産に足し戻され、課税対象になり
ます。暦年贈与も足し戻しはありますが、死亡前3 年以内の財
産に限られています。
相続税の節税効果を考えると暦年課税を使う方にメリットがありま
す。富裕層の間では暦年課税を使って10~20 年程度贈与をす
る人が多くいます。年110 万円の非課税枠を超えて贈与税を払っ
ても贈与した分だけ相続財産は大きく減り、贈与税と相続税の合
計額が暦年贈与をしない場合の相続税より少なくなるからです。
政府はこうした節税対策を資産格差の拡大や固定につながると
問題視し、贈与税全体の見直しを始めています。
では具体的にはどのようになるのでしょうか。選択肢として挙げら
れているのが暦年課税を廃止し、贈与税を相続時精算課税に一
本化する案です。その他には、相続時精算課税の非課税枠拡大
と暦年課税の厳格化をセットで実施する方法も挙げられています。
例えば相続時精算課税の非課税枠を2500 万円から3000 万円に
増額する一方で、暦年課税の足し戻し範囲を死亡前5~10 年以
内に広げたり、非課税枠を60 万円に縮小したりするというシナリ
オです。
一括贈与の非課税制度で教育資金の使い残しは一定の条件で
相続財産に加算するようになり、住宅資金の非課税枠は1500 万
円から1000 万円に縮小しました。今後贈与を使った相続対策は
検討の余地がありそうです。


コメントComment