株式会社 エイジェントヴィレッジ
ファイナンシャル・プランナー(CFP )
アベノミクス開始以降、富裕層は世帯数、保有する純金融資産
総額ともに右肩上がりで増加しています。一方、コロナ禍など様々
な環境の変化で、新たな富裕層が台頭し、個人金融資産の状況も
様々で、管理・運用の考え方も変化してきています。現在の日本
の富裕層における潮流を一緒に見ていきたいと思います。
日本の年間平均賃金は経済協力開発機構(OECD) 加盟国35 カ
国中22 位で下位グループに位置しています。18 位の韓国やOECD
の平均も下回っており、OECD よりデータが発表になった2021 年10
月には大きな話題となりました。少子高齢化が進み、経済成長が鈍
化する中、賃上げも一向に進まず、低い所得水準に甘んじているの
が日本の状況です。
しかし、その一方で、純金融資産1 億円以上を保有する富裕層に
関しては、世帯数および保有する金融資産も増え続けています。
純金融資産保有額(保有する金融資産額から負債額を差し引い
た金額で、不動産は含まない。) 階層別に見ると、2019 年時点で
1 億円以上5 億円未満保有する富裕層は124 万世帯、5 億円以上
保有する超富裕層は8.7 万世帯で、合計132.7 万世帯となりました。
その数は2005 年以降に最も多かった2017 年の合計126.7 万世帯か
ら6.0 万世帯増加しています。純金融資産保有額についても超富裕
層は2017 年の84 兆円から97 兆円、富裕層も215 兆円から236 兆
円と2 年間で大きく伸ばしています。
その背景が気になるところですが、まず一つ目に挙げられるのがア
ベノミクス以降の株式や不動産の資産価格の上昇です。階層別に
保有する資産に占めるリスク性資産(株式、債券、投資信託、年
金保険) の金額の比率を見ると、世帯の純金融資産保有額が3000
万円未満のマス層が9 .8%に対し、富裕層・超富裕層では42.6%と
4倍超に上ります。富裕層の資産は相場の上昇が大きく起因している
ことがわかります。マス層が純金融資産保有額を2017 年より減らして
いるのと対照的な結果となりました。
背景には他にも、第四次産業に合わせた新しい起業家が台頭し始
めていることや、日本企業の賃金体系が成果報酬型に移行している
ことも挙げられます。また新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり
ます。高額な商品やサービスの利用を控えるようになった富裕層も増
えたようです。
個人資産の管理・運用についての考え方の変化についても、今ま
でにない兆候が見られます。「NRI 富裕層アンケート調査」によると、
「個人資産のことよりも、所有する事業や法人の先行きが、以前より
も心配になった」や、「複雑でわかりにくい商品よりも、シンプルでわ
かりやすい商品を好むようになった」などの上位に続き、「自分の考
えだけで資産の管理・運用をするのは限界があると感じた」「資産の
管理・運用に関するアドバイスをしてもらえる信頼できる専門家が必
要だと思った」というような、これまでにない意見もありました。
個人によって直面する状況やダメージが異なり、今後も先が見通せ
ない時代の中で、プロによる質の高い情報提供、自身のニーズに
合わせたきめ細かいアドバイスを受けながら資産形成を慎重に判断し
たいという思いが、相談ニーズの高まりにつながっているようです。