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世界経済は、〇〇パニック ~インフレ、食糧危機、金利上昇、そして円安

スペイン風邪から100 年ぶりに起こったパンデミック。COVID-19
の脅威からようやく解放されようとしている最中、今度は経済的な混
乱が世界で巻き起こっています。ユーロ圏では過去最高のインフレ
率を更新し、米国では41 年ぶりの高インフレに直面しています。
インフレ対応のため金融引き締めを急ぐ一方、金融緩和を続ける
日本との金利差が一段と広がり、6 月13 日の市場では24 年ぶりの
円安となる135 円台をつけました。円安を受けて国内では外貨建
て資産を円に変える動きが加速しています。個人の外貨預金残高
は、ピーク時である3 月末時点の6.1 兆円から1 兆円近く減少しま
した。それに合わせて、外貨建て保険も解約が広がっています。
目先の円安の加減を120 円台半ばとみて利益確定に動く個人が増
えているようです。しかし、更に円安は進んでいます。円の先安観
が強まれば、外貨建ての資産運用が再度増える可能性があります。
国内預金の実質ゼロ金利が続く中、外貨預金は為替差益と利
息が見込める運用手段として、個人マネーが流入していました。
2016 年1 月に4.7 兆円だった残高は、21 年1 月に7兆918 億円
に達しました。流れを変えたのは新型コロナウイルスです。危機
に陥った経済を下支えしようと各国の中央銀行は大胆な利下げに
踏み切りました。米国の政策金利は19 年夏まで2%を超えていま
したが、20 年3 月にゼロ金利政策を導入し、一気に下限に達し
ました。オーストラリア中央銀行も19 年春まで1.5%だった政策
金利を20 年11 月に過去最低となる0.1%まで引き下げました。
これらの政策金利は私たちが預ける外貨預金の金利に影響してき
ます。あるインターネット銀行では、コロナ前の19 年春まで2%を
超えていた米ドルの1 年物定期預金の金利が0.1%まで下がりまし
た。世界で低金利が長引くと、外貨変動のリスクを負ってまで外
貨預金で運用する妙味が薄れていきました。
しかし2022 年に入ると、コロナ禍の景気回復にウクライナ危機
を受けた資源高が重なり、世界で急激に物価が上昇し始めまし
た。各国の中央銀行が一転して利上げにカジを切ると、金融緩
和を続ける日銀との政策の方向性の違いが意識され、急激な円
安が進むことになりました。6 月13 日時点では、米国国債10 年
利回りの3.36%に対し、日本国債10 年利回りは0.25%です。こ
の数字をみると円から米ドルに移して高い金利で運用するのは必
然なことです。しかし国内の個人は、今までのドル資産を円に戻
すという反対の動きを加速させています。外貨預金残高は、外
貨の残高が変わらなければ、円安によって円建ての評価額は押
し上げられます。にも関わらず残高が減っているのは、評価額の
押し上げを上回るペースで外貨預金が引き出されていることを意
味します。同時に外貨建て保険にも解約が出ています。この要
因としては、預金と同様に利益確定に動く個人が増えただけでな
く、為替や金利水準に連動して自動的に円で払い戻す特約で解
約となるケースが挙げられます。外貨建て保険に強い保険会社
では、3 月の解約数が前年同月比で23%増と急進しています。
一方、投資信託では、外貨建て投信の純資産残高が4 月末に
40.6 兆円なりコロナ前から10 兆円増えています。こちらは積立を
含めた長期の視点で海外の成長を期待した個人マネーが流入し
ています。
今回の円安は金融資産を円建ての預貯金に集中させるリスクを
あぶり出しました。世界の中の一国として、家計の金融資産も世
界に分散させておくことは有効な戦略です。


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