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将来不安と確定拠出年金 ~企業が年金制度に取り組む意義

公的年金の持続可能性について、少子高齢化を背景に不安視する議論が続いています。

少子高齢化が年金財政に厳しい影響を与え、現在の現役世代が高齢世代を支える賦課方式に対して悲観論を唱える向きも少なくありません。
その悲観論が広まる根底にあるのが「将来不安」です。特に若い人にとって、老後を見通すにはあまりにも遠い将来であり、先のことはわからないという漠然とした不安が生じるのは当然のことです。
本来、公的年金は個人では対応が難しいリスクに対し、全国民の支え合いにより備える仕組みです。公的年金が持続可能かどうかは、最終的には、働けなくなった高齢者などを社会全体で支えていくことができるかどうかという課題にかかっています。
公的年金だけで全てを支えることを期待するのは難しく、企業や個人が補完をしあって長寿社会が成り立っていくものと考えるのが良いと思われます。
一方、我が国で約7割の雇用を支える中小企業を見ると、退職年金制度を持つ企業数が減少している実態が明らかになっています。
厚生労働省の就労条件総合調査によると、従業員数30 名から100名未満の中小企業で「退職年金制度がある」と回答した割合は、2018 年14.1%と、2008 年30.2%から16.1ポイント下がっています。「退職一時金制度のみ」は2018 年60.5% (2008 年51.5%)、「退職給付制度がない企業」は2018 年25.4% (2008 年18.3%) と、それぞれ増えています。

この背景はどのような事情があるのでしょうか。
私は、中小企業にとって企業型確定拠出年金制度は、国のため、社員個人のために最適な制度と思っています。
それは、中小企業にとって財政的な負担が少なく、導入後の手間もそれほどかからず、社員の老後資金の知識と準備に企業として役に立てるからです。
しかし実態は、「正規社員に退職年金を実施していない理由を聞いたアンケート」結果によると、「会社の財政負担が大きい」「会社の手続き上の負担が大きい」「従業員規模が小さい」などの回答が上位になります。
実際には財政や手続き上の負担も少なく、加入者1名から制度実施ができることと比べると、退職年金に対するイメージが乖離していることがわかります。

働く側の将来への備えに対する意識も見てみましょう。
「社会保障に関する意識調査」の報告書によると、老後の生活を支える収入とし
て最も多かったのが、49 歳以下では「自分又は配偶者の就労による収入」、50 歳以上では「公的年金」となっていました。「勤務先の企業年金」は全体の約2%にすぎませんでした。また、同じ調査の別種目では、公的年金の受給額が自分が望む老後生活に十分
かどうか、不安を感じている人が全体の半分を超えているという結果もありました。
私たちが退職年金制度を導入していない従業員に聞くと、老後資金を自助努力で準備している人は少数派です。老後の資金づくりに対する正しい知識も不足しているので、結果、公的年金に頼ることになってしまいます。

将来が不確実である限り、将来不安から完全に逃れることはできません。その中で、国全体が支え合う公的年金と、企業が従業員の老後不安を低減させる制度と知識を提供する企業年金制度はますます重要度が増してきます。将来不安を克服するために大事なことは、
より良い未来をつくるために「今何をなすべきか」を考え、行動を起こすことだと思います。

 


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