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ウェルビーイング経営 ~選ばれる会社は、なぜ豊かさに注目するのか

企業の間で社員のウェルビーイング向上に取り組む動きが広がりつつあります。
病気予防など健康対策にとどまらず私生活の充実や働きがいの向上にも力を入れています。個人の幸福感は仕事上の創造性や生産性を高めるといった研究結果も出ています。

ウェルビーイングは世界保健機構(WHO) が戦後広めた概念です。
厚生労働省では、この言葉を「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」としています。
企業が関心を寄せる様になったのは最近のことで、この背景には経営環境の変化があります。産業構造が労働集約型から知的創造型へ進化していて、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性) の時代に競争力の源泉は創造性や革新力と言われています。社員一人一人の潜在能力を引き出す方法としてウェルビーイングが注目され始めました。
研究成果の蓄積も企業の背中を押しています。幸福度の高い社員は創造性が3倍高く、生産性も31%高いと研究結果もあります。また、日本で働くすべての人がビジョンを持って生き生き働ける様になれば、国の生産性は年間22 兆円も高まるというデータもあります。幸福度の高い社員は低い社員に比べて生産性や創造性が高く、欠勤率や離職率が低いことも研究結果で分かってきています。

2021 年に開催されたダボス会議では「グレート・リセット」を掲げ、世界の経済システムを「人々の幸福(ウェルビーイング) を中心に考え直すべきだ」と指摘しました。経済成長だけではなく心の豊かさや幸福を重視する社会が望ましいとの価値観は、新型コロナウイルス感染症の蔓延により世界中で注目される様になりました。日本政府も21 年6 月に決定した骨太の方針でウェルビーイングの文言を盛り込みました。

ウェルビーイングを定義するのに米ギャラップは構成要素を5つ挙げています。①Career (仕事への納得感)②Social (他者との深い関わり)③Financial (経済的満足)④Physical (心身の健康)⑤Community (地域社会とのつながり)。

企業が利益をあげるために、社員が幸せを感じることが重要だとの認識が広がり始めています。ウェルビーイング経営を実現できれば社員が生き生きと働き、優れた人材を引き寄せて、企業収益も高まるとの視点です。
人的資本経営の視点から投資家の間でも注目が集まっています。
人を成長させ、より良い働き方をする社員が多い会社は投資に値するという考え方です。政府も人手不足解消のために生産性を高める必要があるとして人的資本経営を重視しています。

高度成長期の昭和時代の働き方は、個々の幸せを犠牲に働いてきました。自己犠牲による売上達成で短期的な成果は出るかもしれませんが、長期的な成長にはそぐいません。昭和時代は仕事が中心で私生活は二の次でしたが、平成になり仕事と私生活のバランスを取るワーク・ライフ・バランスが言われる様になりました。
そして令和の今は、生活の中にいかに仕事を充実させるかのワーク・イン・ライフの考え方に移ろうとしています。

人生100 年時代の考え方にも繋がります。これからの会社は、社員か
ら「選ばれる会社」でなければなりません。