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金融リテラシー調査2022 年の調査結果 ~金融教育を国家戦略で推進

金融広報中央委員会が金融リテラシー調査2022 年の結果を公
表しています。金融リテラシー調査は、日本における18 歳以上
の個人金融リテラシー(お金の知識・判断力) の現状を把握す
るために実施するアンケート調査で、2016 年、2019 年調査に続
く3回目の調査になりました。調査方法は人口構成とほぼ同一の
割合で収集した18~79 歳の30,000 人を対象にアンケート調査を
実施しました。設問の特徴は、金融庁が2014 年に提示した「金
融リテラシー・マップ」の8分野に基づき、「金融知識・判断力」
に関する正誤問題と「行動特性・考え方等」といった金融リテラ
シーにかかる53 問で構成されています。53 問のうち4割程度は、
米国FINRA (金融業界監督機構) やOECD/INFE など海外機
関による同種調査と比較可能な内容となっています。
さて気になる調査結果ですが、金融リテラシー正誤問題の正
答率は、全体で55.7%と2016 年55.6%、2019 年56.6%から見
ると概ね横ばいです。日本人の金融リテラシーは上がっていない
ことがわかりました。「金融リテラシー・マップ」8分野の家計管理、
生活設計、金融取引の基本、金融・経済の基礎、保険、ローン・
クレジット、資産形成、外部の知見で、前回の2019 年から上
昇している項目は一つもありませんでした。
そもそも日本では、金融教育を受けたと認識している人は7.1%
と低く、金融教育を求める声は71.8%とニーズが髙いことがわか
りました。金融教育を受けた人の方が正答率は高く、望ましい金
融行動をとる割合も高いことがわかります。また、金融トラブルの
経験割合も低い傾向が見られました。
投資行動についても興味深い結果が出ています。〈【問】10 万
円を投資すると、半々の確率で2 万円の値上がり益か、1 万円
の値下がり損のいずれかが発生するとします。あなたならどうしま
すか。〉の期待収益率+5%の投資案件について、7割以上の
人が「投資しない」と回答して、損失回避傾向が強く見られました。
また、〈【問】過去に1ヶ月の生活費を超える金額のお金を運用し
たことがありますか。〉の設問に、資産運用を行なったが、
26.9%にとどまりました。
株式、投資信託または外貨預金・外貨MMF の購入経験につ
いても、「購入したことがある」との回答が、2~3割程度の低い
水準になっています。なお、金融商品購入時に、その商品性
をどの程度理解していたかをみると、株式や外貨預金等につい
ては、商品性を理解せずに購入している人の割合が2~3割と前
回より増加していました。
米国調査との比較をみると、比較可能な正誤問題の正答率で
は、日本47%に対して米国50%となっています。知識面では複
利についての設問が日本は弱く、米国72%に対して日本は43%
でした。「金融教育を受けたことがある」と認識している人の割合
は、日本7%に対して米国20%。「金融知識に自信がある人」
の割合は、米国では回答者の71%を占めており、日本の12%
を大きく上回っています。OESD 調査との比較では、24 カ国のう
ち日本は第8 位で、インフレ、分散投資、お金への注意の行
動面などの項目で他国と見劣りをしていました。
今回の調査では、金融教育はプラスの効果があることが再確
認されました。また、世の中の金融教育に対するニーズが強い
ことも確認されました。政府が掲げる「資産所得倍増計画」を推
進するには、NISA の抜本的拡充と合わせて、金融教育の普及
も鍵となります。金融教育を国家戦略として推進する体制づくりが
望まれています。