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シニア人材の活用が日本の職場の未来を描く ~高齢労働者の増加と急増する労災対策~

近年、 労働市場におけるシニア人材の役割が増加しています。

2022 年時点で 70 歳以上でも働ける企業は4割を占め、

この10 年で2倍以上に増えています。

特に介護・福祉分野では、従業員の 15%が65歳を超えています。

人手不足の解消に向けてシニアの活用が欠かせない一方、

労働災害は急増しています。

円安で外国人労働者の確保も難しくなるなか、

職場環境の整備が急務になっています。

「一日働くと自信につながる。 社会から取り残され ずに役立っていたい」。

埼玉県川口市の家電量販店では、81 歳の女性が週4日出勤し、

商品の搬入から陳列、 接客まで担当して います。

彼女の家電の販売歴は20年。 同社では69歳から働き始めました。

この家電量販店では2021年に雇用の年齢上限をなくしました。

70歳以上の従業員は約30人、80歳以上も3人います。

経営者は、「年齢で働く限界を決めるのは『人生 100 年時代』 にそぐわない。

高齢者を生かせないのは損失だ」と言っています。

日本企業においては、シニア人材の重要性が高まっています。

厚生労働省のデータによれば、 70 歳以上でも働ける企業は、

過去10年間で倍増。

また、定年制度を 65 歳以上に設定している 企業も増え続けています。

総人口に占める生産年齢人口(15 ~ 64 歳)の比率は22年に59%

と00 年より9ポイント低下しています。

円安で外国人労働者の確保が難しくなり、

子育て中の女性の労働参加の拡大も頭打ちに なるなか、

細る現役世代を補うにはシニア人材に活路を求めざる を得ない状況です。

企業などが雇う全ての従業員(全雇用者)のうち、

65歳以上の比率は22 年に10.6%(639 万人)と過去最高になりました。

業種別でみると人手不足の特に深刻な建設や介護は15%に達し、

運輸も10%を超えています。

運輸の中でもタクシーやバスなどに限れば30% が65歳以上です。

秋田市のタクシー会社では、約25人の乗務員の過半が65 歳以上です。

秋田県は高齢化率が全国で最も高い地域です。

求人の応募は2カ月に1人しか来ないらしく、 現役世代は県外に流出し、

シニアなしに経営はできないようです。

経済協力開発機構(OECD)によれば、

全雇用者に占める65歳以上の比率は米国が7%、

ドイツが4%。2ケタの日本は大幅に高い状況です。

シニアが日本の労働力の要になりつつある一方、

高齢化のひずみも浮き彫りになり始めています。

目立つのが労災の急増です。

60歳以上の労災の発生数は22年に約3万8千件と5年間で26%増えました。

増加率は全体平均の 3 倍です。

体力や注意力の低下で若い世代なら回避できる事故も

高齢者には避けられないことも多くあります。

事業の継続にシニアを雇用しても安全に働ける職場環境がないと

企業の生産性も低下しかねません。

シニアの戦力化に向け、企業には労働環境の整備などを通じて

身体的負荷の少ない職場をつくることが求められます。

賃金にも課題があります。 厚労省によると22年までの

10年間で65~ 69歳の平均賃金は6%増えましたが、

70歳以上は9%減りました。

シニアの雇用が増えるなかでも70歳を超えると、

求人が現役世代の敬遠する肉体労働中心の低賃金業種に偏り、

安い給料でも働かざるを得ないケースもあります。

シニア人材は日本 の未来を支える重要な存在となっています。

その活用には様々な メリットがある一方で、

労災対策や職場環境の整備、賃金問題などの課題も伴います。

これからの日本が、国力や産業競争を維持していくためには、

これらの課題に対する政府と産業界の連携と取り組みが不可欠となります。

 


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