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オンライン診療 普及へ加速 〜情報テクノロジー政府後押し〜

情報通信技術を使って医師が離れた場所の患者を診る「オンライン診療」が、本格的に動き出しそうです。遠隔診療を広く認める厚生労働省の方針を受け、福岡市の診療所がいくつかの疾患で試行し始めました。情報技術の医療への活用は、医療サービスの効率向上で年40兆円超の医療費の伸びを抑える効果への期待があります。対面の診療に比べて低い医師への報酬が来年度改定で上がることになれば、普及に弾みがつくかもしれません。

福岡市のクリニックでは、患者は診察室に入る前、情報端末に体調の情報を入力。その情報が診察室の端末に飛び、これまでの履歴の分析とともに映し出されます。同クリニックが使うシステムは福岡市と福岡市医師会、医療法人社団鉄祐会(東京・文京)が4月に試行を始めました。現在、11の医療機関が試行に参加し、患者が入力する情報や対象となる疾患について鉄祐会グループと精査しています。同グループは今後、患者の携帯情報端末と診察室の端末をビデオでつなぐオンライン診療の仕組みを整える予定です。例えば気管支ぜんそくで毎月通院している患者なら、隔月はオンライン診療で済ませ、実際に通院する頻度を隔月に減らすことも可能です。リウマチや糖尿病、認知症なども候補になります。

遠隔診療は医師がいない離島やへき地で用いられてきましたが、厚労省がより広く認める方針を示し関心が高まっています。都心でも遠隔診療を採用する医療機関が現れ、ネットにつながる血圧計など機器も増えてきました。福岡市は地元の医師会と組んで展開するのが特徴です。

政府は新たな医療ビジネスを生む成長戦略の一環でオンライン診療を後押しする構えです。患者にとって通院の手間が省ければ、治療を継続しやすくなる面もあります。端末も使いながら患者と医師のコミュニケーションが密になると、疾病の早期発見や悪化防止につながる可能性もあります。結果的に医療費の増大に歯止めがかかる効果が見込まれます。

オンライン診療の普及に向けた課題のひとつが、公的保険から医療機関に支払われる診療報酬の格差です。今の報酬体系は患者が来院する対面での診療を重んじています。オンライン診療は電話でのやり取りの一種とみなされ、多くの場合は対面の半額以下です。政府が来春の報酬改定で、健康データを活用するオンライン診療の効果をどの程度評価するかによって普及の仕方も大きく変わってきます。

遠隔診療はあくまで対面の補完というのが医師会の基本姿勢です。オンライン診療は2回目からの診療に限るとはいえ、医師が五感で患者の情報を集める対面でなければ気付かない異変もあり得ます。こうした懸念に応える意味でも、対面とオンラインをうまく組み合わせる仕組みづくりが大きな課題となりますが、情報テクノロジーの医療への活用の流れはさらに加速することが予想されます。