人工知能(AI)やビックデータの活用で、医療や金融の分野でも急速な発展と想像を超えた進歩をすることが予想されています。日本経済新聞の記事を基に12年後の2030年の生活を見てみましょう。
「熱が少し高いみたいだ」ほてったわが子の額に手を当てた父親は気が気でない。一瞬「インフルエンザ」が頭をよぎったが、そう言えば数年前にワクチンを打ったことを思い出した。ワクチンを幼児のうちに数回摂取しておけば、生涯にわたってインフルエンザを予防できるようになっているからだ。
父親は事故で両手を失い、義手で生活している。しかし身につけているという感覚はない。本当の手のように温度を感じ取れる。もはや体の一部になっている。
病院も様変わりした。手術室ではVRの活用が当たり前になっている。外科医が見つめるのは、宙に浮かんだ臓器の映像だ。患者の体内を1㎜以下の制度で可視化し、1㎜以下のガンでも見逃さない。腕に刺す注射針も蚊の針のように細い。注射の痛みは過去のものだ。内視鏡手術も極端に細くなった器具を使い、体には傷が残らない。
「医療が変わった」と実感できる場面は増えた。患者の顔色からAIが病名を言い当てる。感染症から、ガン、認知症まで多くの病気が発症前に予防できるようになっている。若さを保つ成分や老化の仕組みもビックデータから解析され、健康に過ごせる健康寿命も100歳以上まで伸びた。
母親と娘は雨の中、買い物に出かけている。「今日は雨だから、お茶のペットボトルが安いのね」。お店の自販機の前で娘はスマホをかざす。同じお茶の飲料でも、晴れていたり暑かったりする日は100MUFGコイン、でも雨だったり寒かったり売れ行きが悪そうな日には98.55MUFGコインになる。「ママが学生の頃は100円玉とか1000円札とか、金属や紙でできたお金を使って買ってたの。おつりもあったわ」「なにそれ!みんながそれを持ち歩くの?」そんな話をしながらスーパーに向かう。「今日は寒いので鍋にしましょう」鍋の材料を買い物袋に入れそのまま店を出る。レジに並ぶ必要はなく、店を出るとスマホに自動的に決済された商品の表示がされる。
三菱UFJフィナンシャル・グループの「MUFGコイン」や、みずほFGの「J
コイン」などメガバンクが開発したデジタル通貨を人々が持ち、スマホや生体認証で管理。昔は銀行に行ったりATMでお金を下ろしたりしたが、今や銀行に行く人などほとんどいない。住宅ローンも資産の運用相談も、保険加入もネットで済ませられるからだ。
「あ、パパったら、お酒ばっかり買ってる。」収入もコインの使い道もすべて把握できてしまうので、個人の行動は丸わかりだ。虹彩認証などで本人以外がお金を勝手に引き出したりするのはほぼ不可能。「もう、お酒ばっかり飲んで健康状態が悪くなったら、保険料金も住宅ローン金利も上がっちゃう。もう少し高い性能の良いロボットに健康管理と資産運用させないと」。医療や家計、健康管理の仕方も、昔とはずいぶん変わった。