Blogブログ

オンライン診療、保険適用から半年 〜対象疾患限定で導入は1%止まり

パソコンやスマートフォンのビデオ通話機能を使うオンライン診療の導入が進でいません。4月に保険適用が始まりましたが、全国の厚生局に届け出た医療機関は約1000カ所と全体の1%ほどにとどまっています。厚生労働省が対象を糖尿病などの慢性疾患に限っており、基準が厳しいことが背景にあるようです。普及に向け、政府は成長戦略を議論する未来投資会議で規制緩和を検討しています。

保険適用が始まった4月にあわせてオンライン診療を申請した医療機関は約800カ所でした。5~8月は毎月数十カ所、9月は7カ所の増加にとどまり、導入の意欲がある医療機関の申請は一巡した形です。

保険適用になったのに導入が進まないのは、オンライン診療を活用すれば便利だと思われる病気が対象から外れているためのようです。

例えばうつ病。患者が自宅から出られず病院に来られないケースもありますが、現状では新規の患者はオンライン診療の保険が適用されません。

通信機器を使う診療は具合が悪いときに担当医に電話する「電話等再診」として拡大解釈し、15年8月から事実上認められてきました。しかし厚労省はオンライン診療の新設にあたり、「一定のルールを定める必要がある」と判断。3月にまとめたガイドラインで対象を一部の慢性疾患に限り、結果的に要件が厳しくなりました。

運用のルールが細かいことも普及の壁になっています。オンライン診療でも、最初の診察は対面が義務づけられています。身近なかかりつけ医に患者を誘導する政策目標を重視し、対象者は原則としておおむね30分以内に通院できる患者に限られています。オンライン診療はあくまで補完的な位置づけで、多くの情報が得られないことなどを理由に日本医師会は慎重な姿勢を崩していません。

医療機関の収入にあたる診療報酬は患者1人につき月700円と、通常の再診料の1回720円と比べて遜色はありません。一方で定期的に診療することで得られる管理料は対面に比べて1000円以上も低いことが、医療機関の意欲をそぐ要因にもなっています。

規制緩和を求める声は多く、オンライン診療で患者の利便性が高まるのは間違いないと訴える医師は少なくありません。

ガイドラインに具体例が少なく、対象の疾患の範囲がわかりにくいといった批判もあります。このため厚労省は18年度中にQ&Aを公表する意向で、未来投資会議では、対象の疾患をどこまで広げるかが焦点になっています。

薬剤師が薬の飲み方を遠隔指導するオンライン服薬指導も国家戦略特区で始まっています。また、病気の治療を目的としたスマホアプリの実現も近づいています。国が有効性を認め保険が適用される禁煙アプリが2019年にも第一弾として登場する見込みです。先行する米国ではアルコール中毒やうつ病などにも対象が広がっています。

医療のあり方が変わることはもはや止めることはできないようです。