「アジャイル」という言葉をご存知でしょうか?
テクノロジー開発分野でよく耳にする手法なのですが、最近このアジャイル型を組織に当てはめた「アジャイル型組織」が欧米で注目を集めています。近年のグローバル化やテクノロジーの急速な発達によって、組織のあり方は変革を求められる中、未来の組織マネジメントの手法として取り入れる企業が増えています。
アジャイルとはもともと「俊敏」「機動性ある」を意味する言葉です。それから誕生したのが「アジャイル型組織」という組織形態です。市場の状況やクライアントの要求、社会全体の変化を素早く察知しながら「ミス」や「見込み違い」をキャッチアップし、機敏に軌道修正することで、より需要にすり合わせた物に作り替えていく手法になります。
今までの組織は機械のように考えられていました。ヒエラルキー化された組織構造の中でトップの命令によって下が動き、社員はコントロールされるべきものと捉えられていました。しかし近年の急速な社会・経済の発展によって、意思決定のスピードが遅れがちな機械的な組織は成長が難しくなり、組織改革は多くの企業にとって喫緊の課題となってきました。
2017年〜18年のマッキンゼーの組織改革に関する調査によると、1900の企業のトップのうち3年以内に組織構造を改革した企業は82%に及ぶそうです。そこで組織の新しい捉え方として注目を集めているのが、機械ではなく「生き物」のような組織です。誰かの指示がなくても環境に合わせて勝手に進化していき、安定性とダイナミックさの絶妙なバランスを保つ組織です。
では具体的にアジャイル型組織とはどのような組織を目指すのでしょうか。上述の通り、従来の機械的な組織はトップに権力が集約されていたので、組織の骨組みは強固だったのですが、意思決定に時間がかかりすぎたり柔軟性に欠けるという問題が指摘されてきました。一方でアジャイル型組織とは、組織をフラットなチームの集合体と捉え、トップだけでなく各社員に権限を分散させることで、迅速な意思決定や素早い開発サイクルを可能にした組織モデルです。
アジャイル型組織では、チームごとに素早く、かつ効率的に戦略・構造・人材・プロセス・技術を形成できるために、市場の変化に対応できるだけでなく、全員の向かう方向性や目的が非常に明確であるために組織の安定性を保つことが可能となります。
マッキンゼーの2500人の組織リーダーに対するアンケートによると、回答者の3/4がアジャイル型の導入を社内の優先事項としており、40%は既に導入の動きを始めているそうです。このように、アジャイル型組織は今後確実に主流となっていく組織モデルだと言えます。
アジャイル型組織には自由な裁量を与えることが必要ですが、それと合わせて次の3つの要素が最低限必要です。①情報の開示とその共有、②失敗を許容する文化、③共通の目的です。職員の人たちが活き活きと目的に向かって学び、患者様の要望に臨機応変に応えていく。地域で運営される医院にはこのアジャイル型組織運営がピッタリに思えます。