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遠隔診療やオンライン健康相談窓口が急拡大 〜新型コロナ対応で要件が緩和〜

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、医療IT(情報技術)分野の企業がオンラインサービスの促進や無償化を進めています。スマートフォンを使う遠隔診療などにより、外出する必要をなくし、アプリを使った医療相談サービスで、利用件数が急増した例もあるようです。

今回の感染拡大で、世界的に医療提供体制の維持・確保が大きな課題となっています。日本は病床の準備を急ぐほか、ビデオ通話によるオンライン診療を公的保険で認める基準を特例的に緩め、院内感染の防止を進める方針です。

政府は2月にまとめた新型コロナ対応の基本方針で、今後患者が大幅に増えた場合は「極力、医療機関を受診しなくてもよい体制を構築する」と明記しています。軽症者は自宅療養に切り替え、入院病床は重傷者が使うことも求めています。感染が急速に広がったイタリアでは軽症者も入院させた結果、医療崩壊が起きたとされています。OECDによると、イタリアの病床数は一千人あたり3.2で日本の4分の1程度とのことです。

患者の側も危機感を強めているようです。「病院に行ったら感染するかもしれない」と、医療機関には高血圧などの生活習慣病で定期的に受診する患者からの問い合わせが増えているようです。新型ウィルスが発生した中国では病院に患者が溢れかえり、院内感染が起きたとされています。

オンライン診療などを提供する医療システム会社のメドレーによると、同社のオンライン診療アプリに登録した新規患者数は2月になって急増しました。遠隔診療のニーズは着実に高まっています。

しかし従来は公的保険を使うには高いハードルがありました。具体的には6ヶ月以上(4月からは3ヶ月以上)の対面診療を経ていることなどを条件としていました。厚生労働省は2月28日にルールを改め、高血圧など慢性疾患の患者の場合は複数回受診していれば特例的に「差し支えない」としています。初診は対面という原則は維持したままです。

これにより患者はこれまで服用してきた薬をオンライン診療や電話で処方をしてもらえるようになりました。今後は高血圧の患者の血圧が上昇した際に別の薬に変えるといったこともできるようになります。

厚生労働省は新型コロナの「まん延期」とも呼べる次の段階に入れば、自宅療養する軽症患者が重症化していないかどうかオンラインで経過観察することを認める方針です。ただ現場で十分に活用できるかは不透明です。オンライン診療は2018年度から保険適用されたものの普及にはまだ遠く、19年3月の利用者は全国で100人超となっています。要件が厳しかったのが大きな理由です。厚労省の有識者会議でも要件緩和は議論されてきましたが、日本医師会が単に利便性を高めるための見直しには強く反対してきた経緯があります。対面に比べ診療上必要な情報が限られるほか、営利に走る医療機関が出るのではないかといった懸念からです。

一方医療のIT化は進んでいきます。LINEヘルスケアなどでは、今回の新型コロナでオンライン相談サービスを無償で提供し始めました。77人の医師が参加し、正しい情報の共有を目的としていますが、2月の相談件数は1月の40倍に急増したそうです。

新型コロナの流行が終息した後には、特例対応にとどまらず、改めてオンライン診療のあり方が見直されることになりそうです。